この記事は、日本照明家協会雑誌(以下雑誌)2011年2・3月号に掲載されたN.G.C.SITEの文章が元になっています。雑誌の紙面容量の都合で掲載できなかった文章もありましたが、Web上でノーカット版として掲載いたします。
2010年の暮れ12月13日に、東京支部の忘年会とN.G.C.との共同企画として、「PCコンソール大特集 PART2!」が開催されました。年の瀬の多忙な時期にもかかわらず、多数の参加をいただき、ありがとうございました。
近年、照明業界でも急速に広がりつつあるPCコンソールの世界。もちろん操作性において専用設計されている卓とは比べるべくもないはずですが、特徴として開発にかかる時間が専用機と比べて格段に短いため、急速に広がっているLEDや多機能フィクスチャー、さらには映像といった新しい分野へのコントロールへの対応が早く、アップデートによって劇的な機能強化を持ったりすることもあり、照明家としては目が離せません。PCといえども使用状況によっては実際の現場で活用できたり、映像とのコラボレーションを実にうまく取り込んだ、PCならではの機能の広がりを持たせたものなど、実に多彩な世界となっています。
会場にはPCコンソールを設置したブースが多数配置され、中央のワークショップエリアでは絶え間なくミニワークショップが行われています。今回はミニワークショップのお話を中心に、各コンソールをご紹介したいと思います。
文:泉 次雄(N.G.C.メンバー)
写真:安間 ひろ江(N.G.C.メンバー)
進化したビジュアライザー、ライトコンバース

ミニワークショップのトップバッターをお願いしたのは、最近話題になっている新しいビジュアライザー、ライトコンバースです。担当はテクニカルサプライジャパンの鈴木氏です。
厳密には実際に我々が現場でコンソールとして使用するものではないのですが(シーンをシーケンシャルに組んでDMX出力することは可能)、事前打ち込みをするにあたりもはやビジュアライザーは不可欠なものと言えます。今回のワークショップも、実機としてのフィクスチャーは一切なく、全てのコンソールに何らかのビジュアライザーを接続しています。
ということで、コンソールという点からは離れますが、特別にミニワークショップを行って頂きました。 ビジュアライザーの中でもライトコンバースは最近で最も注目を集めています。その理由は、まず描写力。単にビームの美しさなどにとどまらず、物質の光の反射度合い、透過具合など、実に多くのパラメータがカスタマイズ可能です。他の理由としては、直感的なユーザーインターフェースがあげられます。
従来のビジュアライザーもユーザーインターフェースは実によく考えられていて、バージョンアップとともにどんどん使い勝手も向上してきておりますが、ライトコンバースは別次元のユーザーインターフェースを備えています。 あまりに高機能で紹介しきれませんが、また改めてご紹介したい一品だと思います。
Avolites タイタンモバイル

Avolitesの担当はファーストエンジニアリングさんで、講師として横山氏にミニワークショップを担当していただきました。 Avolitesもタイタンというコンソールソフトウェアの登場によりだいぶ様変わりしました。従来のロックボードスタイルに、Hog的な要素が加わって明らかにプログラムに幅が出来ました。キューリストの概念を持ち、シーケンシャルな実行がマスターGOによって可能になっています。
さらに今回ご紹介頂いたのは、タイタンモバイルという新製品です。これはPCに接続するコンパクトなウィングとして動作しますが、オペレーターが手持ち出来るコンソール環境として設計されたそうです。タッチパネルやキューフェーダー、コマンドボタンなどを備え、ソフトウェアベースになった恩恵をフルに発揮した製品に仕上がっています。これを片手に海外でもオペレーション・・・というようなオペレーターの姿が想像できます。
モバイルを意識した製品は他のメーカーでもありますが、オペレーター中心の考え方を守り、多大なユーザーを獲得しているAvolites。要チェックの一品と言えます。
Hog3のネットワーク構築について

Hog3 PCはウシオライティングさんが担当です。講師として田井さんからネットワークについての解説をいただきました。 コンソールの世界でネットワークといえば、ほぼイーサネットのお話です。規模によっては光ファイバーになることもありますが、いずれにせよ5PINキャノンのローカルDMXではなく、パソコンやインターネットで使用されているIP技術をベースにデータをやりとりしているお話になります。PCコンソールでもそうですし、実機でも最近はイーサネットによる接続は珍しいことではありません。
内部を通っている信号は規格に種類があって、ほぼグローバルスタンダードになりつつあるArtNet、次世代スタンダードへの架け橋となるsACN、そして他にもHog3、grandMA、Avolitesなど、各メーカーの独自規格が多数あります。いずれにせよイーサネット接続による主な恩恵は、最近の多チャンネル化した器具への対応です。DMX512はその名の通り512chしか情報が持てません。ところが最近のムービングライトは1台で30chくらいは平気で必要になります。10台使用すると300ch、最大でも17台しか使用できないことになります。そうすると2ユニバース目、3ユニバース目と使用する系統を増やしていくわけですが、系統が増えてくると現場での管理も複雑になってくることになります。他にも、メディアサーバーやデジタルスポットなど、映像も扱える器具は1台で450チャンネル以上使用することもあり、1台で1ユニバースを必要とする局面も出てきています。そこでイーサネットの出番となるわけです。イーサネットは1本のケーブルに複数のユニバースのDMXを含めることが出来、またローカルDMXのように一方通行の通信ではなく、どのような場所でも信号の入力/出力が可能になる利点があります。当然便利なことばかりではなく、データ量の規模が大きくなってくればイーサネットの通信経路のポテンシャルを保つための工夫が必要となってきます。単純に電気のように太い電線を使えばドロップしない、という考え方は通用しません。このような部分を技術者的観点から解説して頂きました。
現在はまだ現場でのネットワークの使用は限定的な物であり、あまりネットワークのパフォーマンスを気にすることはありませんが、将来的に確実に必要になってくる技術といえるだけに、今後N.G.C.でもネットワークに関する勉強会を検討しています。
圧倒的コストパフォーマンス、サンライト

Sunliteのご担当はイースペックさんです。 SunliteはPCコンソールの中でもその歴史は古く、10年以上も前の早い段階からPC専用コントローラーとしてバージョンアップを繰り返してきました。それだけに、あくまでPC専用にこだわった独特の操作方法、グラフィカルユーザーインターフェースが特徴です。特筆すべきは、圧倒的に安価であることです。専用の実機はなく、ハードといえばDMX変換のインターフェースボックスと、設備向けの専用ハードのみとなります。
Sunliteとひとくちに言ってもラインナップが多彩で、ライブ向けと設備向けとで大きく分かれています。特に設備向けにはかなり力が入っているようで、環境によって出来るだけコストダウンが計れるように、使用ch数により選択できるインターフェースボックスや外部スイッチコントローラー、メイク接点入力、PC無しで動作するスタンドアローンのボックスなど多彩です。設備向けではローコストというのは非常に大きなアドバンテージです。
設備向けだけでなくライブ向けとしても、PC専用の独特のインターフェースになりますが、画面を見る限りではグラフィカルで、非常にわかりやすいものになっています。それでいて歴史が古いだけに多機能で、パレット機能やグループ機能も備えており、また外部の汎用DMX卓やMIDIコントローラーをつないで物理フェーダーとして使用も出来るため、使い方次第で安価にコンソールが組めるのではないでしょうか。
ベクターとアルカオスの連携

ご担当はスペースエンジニアリングワークスさんです。ベクターはアニメーターやスパークなどの大ヒット商品を送り込んできたCompulite社の製品です。メインは実機で、メディアサーバーのコントロールにも力が入っています。今回はメディアサーバーであるアルカオスとの連携を行っていただきました。
ベクターはMSEX(メディアサーバーエクステンション)に対応したコンソールで、アートネット接続を介してメディアサーバー側にある画像のサムネール(見本)をコンソール側にとってきてくれます。コンソールとメディアサーバーの両方がMSEXに対応している必要がありますが、この機能はメディアサーバーに入っている素材を直接コンソール上で目で見て確認出来るため、たいへん便利です。
このように画像のサムネール表示が簡単に出来るのも、コンソールがだんだんPC寄りになってきたから受けられる恩恵といえます。昔の調光機がこのように進化してくるとは誰が想像できたでしょうか。
マキシーズPCの豊富なウイング

マキシーズはマーチンジャパンさんがご担当で、ムービングライトでもおなじみのMartin社の製品です。こちらもメインではスタイリッシュな実機が存在していますが、PCとも接続できる豊富な拡張モジュールがラインナップされています。
操作部分を5種類のモジュールに分けて、それぞれを組み合わせて自由なコンセプトで環境を組み上げることが出来ます。タッチスクリーンを備えて単体でもコンソールになる小型モジュールコンソール、プログラマーウイング、プレイバックウイング、ボタンウイング、そしてサブマスターウイングがあります。
従来の一般的なコンソールでもだいたいの場合、内部的には機能ごとにモジュール化されているものも多いと思います。ただ、常にそれら全てが必要とされているわけではなく、オールインワンなビッグコンソールが常に求められているわけではないというのが最近のトレンドなのかもしれません。メインとしてビッグコンソールはあるものの、このようにモジュール化してユーザーのきめ細やかなニーズに対応するという動きが各社で感じられます。
grandMA2 onPC

ご担当はタマテックラボさんです。
grandMA2の実機はとてつもなくビッグコンソールです。はたしてPCでどこまでのインターフェースを持てるのでしょうか。
grandMA onPCは従来のシリーズ1とニューバージョンであるシリーズ2が現在並行して販売されています。イーサネットからDMXに変換するノードを用意すれば、どちらも実機無しでDMXを出力することが出来ます。
シリーズ1の時代からそうですが、grandMA onPCシリーズはPC上のボタンもきちんと押しやすいサイズでデザインされており、単なるバックアップという考え方ではなく、PCでの操作性も重視されている感じがします。表示しきれないコマンドボタンのレイアウトも工夫が見られます。
ただ、シリーズ2では大画面化したため、PC上の画面切り替えが多数発生します。ワークショップ時は時間切れとなってしまいましたが、grandMAはiPod touchでのリモートソフトウェアもあり、これは実機でもきちんと動作し、使い方によってはかなり便利なのではないでしょうか。
DoctorMX、シンビジュームとアルカオス

ご担当はゴングインターナショナルさんです。
DoctorMXは今回の企画の中で唯一、純国産のソフトウェアであり、開発者の方も会場に足を運んでいただきました。海外製品に押される一方の照明業界、やはり日本製というだけで応援したくなってしまいます。
DoctorMXは非常に安価であり、使用されている方も多いと思います。もともとはDMXチェッカーとしてスタートしたものが今や一般照明はもとよりムービングライトも扱い、アートネットにも対応し、最近は映像分野での連携も目を見張るものがあります。
今回はDoctorMXと連携させて使用するシンビジュームというソフトウェアをご紹介いただきました。シンビジュームというソフトウェアのすごさは、なかなか言い表せません。映像を扱うことは確かですが、この製品はメディアサーバーとは違い、おそらく今までにないジャンルの製品です。簡易メディアサーバーのような使い方も出来ますが、このソフトは映像をジェネレートする所に大きな特徴があります。何の素材もなしで、雲、星、雪、水、炎などをジェネレート可能で、DoctorMXと連携させることによって調整パラメータをDMXで操作できることが出来ます。
Magic Q PC、キャプチャーとアルカオス

最後を飾って頂いたのは東京支部事務局長でもあるPRGの腰越氏からの挑戦企画となりました。今までご紹介してきたソフトウェアは、インターネットを通じてそのほとんどが入手可能です。無料の場合も多く、時間制限や機能制限などが課されていることもあります。今回はMagic Q PCと、ビジュアライザーとしてキャプチャー、メディアサーバーとしてアルカオスを使用しました。Magic Q PCは無料ですが、キャプチャーとアルカオスは試用版で一部制限があります。
ゼロの状態からキャプチャーをセットアップし、アルカオスの動画をキャプチャー上で走らせることが出来るか?というのが今回の企画でしたが、短い時間で見事Magic Qのショーを音楽と合わせて実演していただきました。キャプチャーの中でアルカオスの動画も走っています。
余談ですが、Magic QもMSEXに対応していて、コンソール上でメディアサーバーのサムネールも表示されます。素材だけでなく、出力結果のマスターアウトプットの画像プレビューまでもがコンソール上に表示可能という、とてつもないコンソールです。

以上、「PCコンソール大特集 PART2!」の模様をご紹介させていただきました。今後もN.G.C.では意欲的に企画を練っていきたいと思います。ありがとうございました。






